荒雑録
映画、小説、漫画他、個人的趣味の感想、記録。
追悼 原尞氏

原尞氏もともとはフリージャズ・ピアニストとして活動していたらしく、1988年、西新宿に事務所を構える中年私立探偵・沢崎を主人公とした『そして夜は甦る』で作家デビューした時には既に40代の遅咲きでした。
しかし、その作風に日本のハードボイルドファンは一発で魅了され、現在に至るまで著者の新作を待ち望む声がやみませんでした。
続く1989年、第2作目の『私が殺した少女』で第102回直木三十五賞受賞し、3作目の『天使たちの探偵』で第9回日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞。
順調な滑り出しかと思われましたが、ファンとして焦れてしまうのが、その寡作さでした。
『そして夜は甦る』から第2作『私が殺した少女』発表まで1年半、『私が殺した少女』から第3作『さらば長き眠り』発表まで(短編集を挟んで)6年、『さらば長き眠り』から第4作『愚か者死すべし』発表まで9年、『愚か者死すべし』から第5作『それまでの明日』発表まで14年を要しており、デビュー以来30年で長編5作、短編集1冊、エッセイ集1冊(文庫化にあたり2分冊)と、自他ともに認める寡作、遅筆作家でした。
そのため2018年の新作『それまでの明日』の発刊にファンは歓喜しました(すみません、私は文庫本で集めていましたので歓喜はしましたが我慢していました)。
そして先日やっと文庫本を古本屋で購入したのですが・・・・5月4日に著者が亡くなったそうです。
私が本を買った次の日です。
驚きと共に、これ以上私立探偵・沢崎の活躍を読めなくなるかと思うと残念でなりません。
読まなければならない本が貯まっている中、いつになるかはわかりませんが、残されたこの一冊を大事に読みたいと思います。

『それまでの明日(2018)』





『そして夜は甦る(1988)』 『私が殺した少女(1989)』 『天使たちの探偵(1990)』 『さらば長き眠り(1995)』 『愚か者死すべし(2004)』
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