荒雑録

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今野敏著 「陽炎 東京湾臨海署安積班」

今野敏著「陽炎 東京湾臨海署安積班」(角川春樹事務所/ハルキ文庫/2006年刊)を読む。

陽炎1-1

東京湾のレインボーブリッジで乗用車から男女連名の遺書らしきものが発見された。

車は乗り捨てられており、男女の心中事件と推測された。

東京湾臨海署の安積警部補は、現場からもどった部下の須田刑事から、意外な言葉を聞かされる。

彼は『偽装心中』だというのだが——。

須田の仮説を信じる安積たちは、事件の驚くべき真相に向かって動きはじめる。(「偽装」より)

組織としての警察を前面に打ち出し、組織の中の刑事を主人公とした、魂を揺るがす人間ドラマ。

新ベイエリア分署「東京湾臨海署安積班」オリジナル連作。

表題作を含む8編を収録。



2006年に「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞を獲った著者であるがデビューは1978年でこれまで120冊以上も著作を数えるベテラン作家である。

私がいつも著作を読んで感心するのは今まで読んだ作品の中に1度も駄作が無い事だ。

もちろん「隠蔽捜査」のようなガツンと来る逆転ホームランは多くは無いが、常に良質なクリーンヒットを飛ばし読む側の予想を上回る満足のゆく作品を与えてくれる。

未だに第一線で活躍するベテラン作家のベテラン作家たる所以であろうが、警察小説以外にもSF、バイオレンス、アクション、伝奇、オカルトなどの多岐にわたるジャンルのシリーズを抱えて、よくこれだけの作品が生みだせるものだ。

本作は「ハンチョウ」のタイトルでドラマ化された通称「安積班シリーズ」の短編集。

ドラマでは原宿神南署が舞台であったが本作はシリーズの初期と同じベイエリア分署=東京湾臨海署の物語。

ちなみに

このお台場にある架空の警察署の設定は著者が最初であり、「湾岸署」と名付けたあの有名なドラマは本作のパクリである。

また、この「東京湾臨海署」は住所も明記されているのだが、偶然にも現在そこには「警視庁第1方面東京湾岸警察署」が建っている。

で本作なのだが

これがまた良く出来ている。

本編を読んでいないと楽しめない部分もあるにせよ、小粒ながらそれぞれに味のあるエピソードばかり。

速水を含む交通課の活躍やSTシリーズの青山君もゲスト出演している。

とても面白かった。

正直あまり期待していなかったせいもあるだろうが、確実に読む側の想像を上回るレベルである。

★★★★★★★・・・ 
→今野敏読了作品一覧

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