浅田次郎著 「憑神」

浅田次郎著「憑神」(新潮文庫/2007年刊)
映画版は観ていないが、なんとなく“物足りない”出来になっていそうな感じがしたので、レンタルされる前に原作を読む。

憑神本

時は幕末。
代々将軍の影武者を務めてきた由緒ある家柄の次男として生まれた別所彦四郎。
下級武士ながら文武両道に優れ将来を嘱望されていたが、ある事件をきっかけに婿養子に行った先から離縁され、兄夫婦のもとで肩身の狭い日々を過ごす羽目に。
そんな彼はある日、昌平坂学問所のライバルで今では軍艦頭取に出世した榎本釜次郎(武揚)が成り上がったのは、向島の“三囲(みめぐり)稲荷”にお参りしたお陰である、と耳にする彦四郎。
そのあと酔って転げ落ちた土手のふもとに“三巡(みめぐり)稲荷”を発見した彦四郎は、思わずお祈りするのだった。
しかし、そこは災いの神を呼び寄せる“みめぐり”違いのお稲荷様で、彦四郎は貧乏神と疫病神そして死神にまで取り憑かれてしまう…


“どうしようもなく不幸な侍のコメディ時代劇”と思って読んだのだが、途中より本作の本当のテーマが現れ、話は一変。
幕末と言う時代に“武士”であり続けた男の選んだ道とは・・・なんて一気に重い展開。
う〜ん。
テンポも良く、読みやすい。
下級武士の生活や江戸の風俗などもよく描かれているし、登場人物たち(一部“人”じゃないけど)も魅力的。
また、武士であろうとする主人公の最後の選択にも感動する。
とても面白い作品だと思うのだが、何かちょっと引っかかる。

主人公が「貧乏神に憑かれ幸福の意味に気付き、疫病神に憑かれ人の生死を考え、死神に憑かれ自分の生きる意味を見つけ出す」と言う物語の流れ自体は不自然ではないのだが、どうも前半の軽いタッチと後半の重い展開が非常にアンバランスで読んでいて惑う思いがした。
「お笑い+感動=涙」は著者お得意のパターンであり私も大好きなのだが、本作に限ってはその二つが上手くかみ合っていない感じがして・・・・本来なら私が号泣するラストシーンでは素直に泣けなかった。

(何度も言うが)面白く感動的な作品ではあるのだが、たえず高望みをするファンにとってはどこか惜しい気がする一冊である。

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

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